好評連載コラム 実務翻訳のススメ

31-3 主な前置詞の意味と用法

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第31章 前置詞

元来前置詞は物と物との関係を示す語で、場所や方向を表していたものが、時間や状態、目的や原因などを表すものへと発展したものといわれています。したがって、同一の前置詞でも前後関係によって意味や用法が異なってきます。たとえば、

I live in Japan. (日本に住んでいる) 〔場所〕
I was born in 1928. (1928年に生まれた) 〔時〕
I am in good health. (元気でいる) 〔状態〕
I am engaged in editing. (編集の仕事をしている) 〔活動〕
I am not strong in technology. (科学技術には強くない) 〔能力〕
I like to paint in oils. (油絵を描くのが好きだ) 〔材料〕

一方、異なった前置詞を用いても同じような意味を表すこともできます。たとえば、
I am engaged in editing. = I am occupied with editing.
I am not strong in technology. = I am not good at technology.
前置詞の意味や用法は複雑多岐ですが、ここでは主要な前置詞について、通則とされているものの概略を述べることにします。

  1. 場所・位置・方向を表す前置詞
    1. at、in
    2. ふつうatは小さな1地点、inは広い地域に用います。
      The manager sat at his desk all day and made phone calls.
      (部〔課〕長は終日机に向かって電話をした)
      We arrived here in New York three days ago.
      (我々は3日前にここニューヨークに着いた)
      【注】大小によるatとinの区別は、話者の立場や心理的な要因によってかなり流動的です。たとえば親近感が強いときは小さな場所でもinを用い、大都会でも一時的な居住地あるいは中継地点として考えるときなどにはatが用いられます。
      I cannot forget the small village in which I spent my childhood.
      (幼年期を過した小さな村が忘れられない)
      The plane stops at New York for three hours on the way to Los Angeles.
      (その飛行機はロサンゼルスに向かう途中3時間ニューヨークにとまる)
    3. on、over、above
    4. onは表面に「接触して上に」、overは表面から「はなれて真上に」、aboveは必ずしも真上ではなく、「より高い所に、~以上」の意味を表します。 There is a blue label on the bottle. (瓶には青いラベルがはってある) The light hangs over the table. (照明はテーブルの真上に吊してある) The lamp must be above the level of the table. (ランプはテーブルの面より高くなければならない)

       
    5. beneath〔underneath〕、under、below
    6. beneath〔underneath〕は「接触して下に」、underは「はなれて真下に」、belowは「より低い所に、~以下」の意味で、それぞれon、over、aboveに対応します。
      The closet is beneathunderneath〕the stairs.
      (便所は階下にあります)
      The car was parked under a large tree.
      (その車は大きな木の下に駐車していた)
      He is below me in rank. (彼は私より役が下だ)
      【注】beneath〔underneath〕、under、belowの本来の用法は上記の通りですが、実際は混同して用いられることが多いようです。
      an annual (=a yearly) income (of) belowunder〕\5,000,000
      (500万円以下の年収)
      piles of rubbish on the table and belowbeneath、under〕it
      (テーブルの上下にある大量のがらくた)
      なおbelowとunderについても意味上・用法上の区別が弱まり、underのほうが好まれつつあるといわれます。
    7. up、down
    8. upは「上へ」、downは「下へ」の意味で上下の運動を表すほか、観念的に「上がったところに」「下がったところに」、あるいは「近づいて」「離れて」などの意味も表します。
      Don’t run updown〕the steps except in an emergency.
      (緊急の時以外は、階段をかけ上っては〔かけ降りては〕ならない)
      He moved steadily up the social scale.
      (彼は着々と社会的地位を築いて行った)
      There is a store about two miles down the road.
      (この道を2マイル行ったところに店があります)
      I walked up and down the platform of the station.
      (私は駅のプラットホームを行ったり来たりした)
    9. round、around、about
    10. この3語はいずれも「周囲・周辺」を表しますが、用い方は一様ではありません。「~を回って」「~を囲んで」「~を曲がったところに」の意味ではround、aroundが用いられます。イギリスではroundは運動、aroundは静止した状態に用いられますが、アメリカでは運動・静止のいずれにもaroundがよく用いられます。 Saturn orbits (a)round the sun. (土星は太陽の周囲を軌道を描いて回る) We sat (a)round the table. (わたしたちはテーブルを囲んで座った) His house is around the corner. (彼の家は角を曲がったところにある) 「あちこちに」「さまざまなところで」あるいは漠然と「近くに」などの意味を表すときには、round、around、aboutのいずれも用いることができます。 Books and magazines were scattered (a)roundabout〕the room. (本や雑誌が部屋のあちこちに散乱していた) Is there a pub anywhere (a)roundabout〕here? (この近くにどこかパブ(飲み屋)はありませんか)
    11. across、through、along、into、out of>/li> acrossは「~を横切って、渡って」、throughは「~を貫き通して、通り抜けて」、またalongは「~に沿って、~伝いに」の感じになります。
      intoとout ofは対応語で、intoは「~の中(の一点)へ」、out ofは「(~の中から)外へ」の運動を表します。
      They drove across the frontier without stopping.
      (彼らは〔そのまま〕無停車で国境を越えた)
      They built a long tunnel through the mountain.
      (山を掘り抜いて長いトンネルをつくった)
      This highway runs along the seashore.
      (この高速道路は海岸をずっと走っている)
      He worked late into the night.
      (彼は〔日中から〕深夜まで働いた)
      The train moved out of the station with its whistle blowing.
      (列車は汽笛を鳴らして駅から出て行った)
    12. to、for、toward(s)
    13. toは「方向」を示すと同時に目的地への到着を暗示する場合、forは出発の意味をもつ語とともに用いて目的地を明示する場合に用います。toward(s)は漠然と「そちらの方へ」と方角を示すだけで、到着の意味は含まれません。
      This road leads to Rome.
      (この道はローマに通じる)
      He left for London by plane this morning.
      (彼はけさ飛行機でロンドンに向けて出発した)
      The house faces toward(s) the north.
      (その家は北向きだ)
    14. among、between
    15. ふつうamongは「3つ以上のものの間に」、betweenは「2つのものの間に」を表すときに用いられます。ただし3つ以上のものの間についてもbetweenを用いる場合があります。これは例えば、a treaty between three powers(三国間条約)のように、周囲のものあるいは相互間の関係を個別的に表す場合です。漠然と総括的に述べる場合はamongが用いられます。
      There are many such men among us Japanese.
      (我々日本人の中にも、そんな人はたくさんいる)

      The railway line between Tokyo and Yokohama was constructed more than one hundred years ago.〔2つの間〕
      (東京・横浜間の鉄道は100年以上前に敷設された)
      The choice lies between the six candidates in the final list.〔3つ以上の間〕
      ( 選出は、最終名簿の中の6人の候補者の間にしぼられる)
    16. by、beside、near
    17. by、beside、nearはいずれも「接近」を表しますが、byは漠然と「そばに、かたわらに」、beside(=by the side of)は「~の横に並んで」、nearは「~から遠くないところに」の意味を表します。
      なお、byとbesideはよく同義語的に置き換えて用いられます。
      The nurse stayed by my bed throughout the night.
      (その看護婦は夜どおし私のベッドのそばにいてくれた)
      There was a swimming pool beside the house.
      (その家の横には水泳プールがあった)
      The hospital is near the station. (その病院は駅の近くにある)
    18. before、behind
    19. beforeは「~の前に」、behindは「~の後(かげ)に」の意味ですが、純粋に場所の前・後を表すときには、in front of、at the back〔rear〕ofのほうが多くもちいられます。
      \( \begin{cases} \text{He has a bright future } \textbf{before } \text{him.} \\ \text{(彼の前途には輝かしい未来がある)} \\ \text{The garage is behind the building.} \\ \text{(車庫は建物のうしろにある)} \end{cases} \\ \begin{cases} \text{There is a car parked } \textbf{in front of } \text{the house.} \\ \text{(家の前に車が1台止まっている)} \\ \text{There is a beautiful landscape garden } \textbf{at the back(rear) of } \text{ the house.} \\ \text{(家のうしろには美しい日本風庭園がある)}\\ \end{cases} \)
  2. 日時・期間などを表す前置詞
    1. at、in、on
    2. ふつうatは時の一点を、inは週・月・季節・年・世紀など比較的長い時を表します。onは曜日・日付のほか、特定の日の朝・晩・夜を表す場合、あるいは時間が密接に続いている場合にも用いられます。
      at noon〔midnight、sunset、dawn〕(正午〔真夜中、日没、暁〕に)、at last(ついに)、at any time〔at all times〕(いつでも)、in the night(夜中に)、in 1989(1989年に)、on the morning of New Year’s Day(元日の朝に)
      He usually gets up at six o’clock. (たいてい6時に起床する)
      He goes to work early in the morning. (早朝に仕事に出かける)
      He doesn’t go to the office on Saturday(s). (土曜日は出勤しない) On my arrival (=On arriving) I called Mr. Sato. (私は到着するとすぐ佐藤氏に電話をかけた)
    3. for、during、through
      forは単なる時の長さを示す「~間」、duringは「~中」の意味で継続中のある一定期間を指し、throughは「初めから終わりまでを通して」の意味を表します。
      The machine should be in operation for no more than six hours a day.
      (この機械は1日6時間以上動かしてはならない)
      We often use the air conditioner during the rainy season.
      (雨季にはよくエアコンを使用する)
      We talked together through the night. (我々は夜通し話し合った)
      for a time(一時は、当分)、for ever(=〔米〕forever)(永久に)、during the vacation(休暇中)、through(out)(one’s) life(生涯)
    4. in、within、after
    5. inは「~したら、たてば」の意味で時間の経過を表すこともあります。withinは「~以内に」の意味で一定期間以内を表し、afterは「~のあとに」の意味でふつう過去に用いられます。
      He will be back in a few days. (2~3日後には帰ってくる)
      He will be back within two weeks. (2週間以内に帰ってくる)
      He came back after a month. (1ヵ月すぎて帰ってきた)
    6. till〔until〕、by、before
    7. till〔untilは幾分改まった言い方〕は「~まで(ずっと)」の意味で時間の継続を表し、byは「~までに(すんで)」と完了する時の限度を表します。beforeは単に時が「前」であることを示すほか、過去の一時点からみて「前に」の意味も表します。
      I will be here tilluntil〕five. (5時までここにいる)
      I will be here by five. (5時までにはここにくる)
      I will be here before five. (5時前にここにくる)
      The report was completed before the due date.
      (報告書は締切期日より前に完成した)
    8. since、from、(after)
    9. sinceは「~以来(ずっと)」の意味で、過去の一時点からその後の過去の一時点または現在に至るまでの継続を表し、ふつう完了時制とともに用いられます。
      fromは「~から」の意味で、単に時の起点を示し、from~till〔to〕・・・(~から・・・まで)の形でよく用いられます。なお、前述したafterには継続の意味は含まれません。
      \( \begin{cases} \text{He has worked in our firm } \textbf{since } \text{1980.} \\ \text{(彼は1980年以来、当店(社)に勤務している―現在なお)} \\ \text{He worked in our firm } \textbf{from 1980 till last year.} \\ \text{(彼は1980年から去年まで、当店(社)に勤務していた)} \end{cases} \\ \begin{cases} \textbf{After } \text{his departure, I heard nothing from him.} \\ \text{(彼の出発後、彼からは何の音さたもなかった} \\ \textbf{Since } \text{his departure, I have heard nothing from him.} \\ \text{(彼の出発以来、彼からは今までに何のたよりもない))} \end{cases} \)
    10. past、to
    11. pastは「~過ぎて」、toは「~前、~まで」の意味で、時刻を表す語とともに用いられます。なおtoはfrom~to・・・の形で到着時刻や期限を表すこともできます。
      There is a train leaving at half past nine.
      (9時半に出発する列車があります)
      I work in this factory from 8:00 to 5:00.
      (私はこの工場で8時から5時まで働く)
      時刻の言い方には「~時・・・分」をそのままの数字で表す場合と、「分 + past〔to〕+ 時」の形で30分まではpastを用い、30分以後は次の時間に向かってtoを用いる言い方とがあります。
      It is twenty pastto〕ten by my watch.
      (私の時計では10時20分すぎ〔前〕です)
  3. その他の前置詞
  4. 以上のほか、前置詞は原因・理由・目的・手段・材料・道具・関連・度合い・様態などさまざまな意味を表しますが、これらは動詞や目的語との関係から習慣的に用いられているものです。
    1. 原因・理由:at、for、from、of、through、withなど
    2. I was frightened at the sight of the volcanic activity.
      (その噴火活動を見て私はぎょっとした)
      Carelessness is responsible for your failure.
      (きみの失敗は不注意がもとだ)
      He collapsed from fatigue. (彼は過労がもとで倒れた)
      He died of stomach cancer. (彼は胃がんで死んだ)
      This accident happened through your negligence.
      (この事件はきみの怠慢から起きたのだ)
      His boss was greatly pleased with his work.
      (社長は彼の仕事に大いに満足した)
    3. 目的:for、on、toward(s)など
    4. This door is for emergency use only. (このドアは非常時専用です)
      I’ve come here on business, not for pleasure.
      (物見遊山どころか、仕事でここに来たのだ)
      They are saving (money) toward(s) the education of their children.
      (彼らは子供たちの教育のために貯金をしている)
    5. 材料:of、from、in、withなど
    6. In Japan, houses are generally built of wood. (日本では住宅は一般に木で作られている) 〔不変化〕
      Nylon is made from coal, water and air. (ナイロンは石炭と水と空気からできている) 〔変 化〕
      You have to sign an official document in ink. (公文書の署名はインクでしなければならない)  
      I filled the glass with water. (コップに水を満たした)  
      【注】ofのかわりに強意を表すout ofを用いることもあります。また材料の変化を表すのにintoも用いられます。
      What did you make it out of? (きみはそれを何で作ったのか)
      Wheat is ground into flour, and flour is made into bread.
      (小麦はひかれて粉になり、粉はパンとなる)
    7. 手段・方法:by、with、in、throughなど
    8. You’d better send this parcel not by sea mail but by air mail.
      (この小包は船便ではなく航空便で送ったほうがよい)
      Try opening the door with this key. (この鍵で戸があくか試してごらん)
      Will you accept payment in yen? (お支払いは円でもよろしいですか)
      He succeeded through hard work. (彼は努力のおかげで成功した)
    9. 関連:of、about、on、as to、in regard toなど
    10. I have heard of him, but I don’t know (anything) about him.
      (彼の名前は知っているが、詳しいことは知らない)
      He gave a lecture on the future trends of the world’s population.
      (彼は将来の世界の人口動態に関して講演をおこなった)
      He said nothing as to the hours we should work.
      (彼は我々が労働すべき時間については何も言わなかった)
      He had his own theory in regard to the trade imbalance.
      (彼は貿易不均衡に関しては彼なりの意見があった)
    11. 度合い・単位:at、by、forなど
    12. Water boils at 100℃. (水は摂氏100度で沸騰する)
      The car traveled at a speed of 80kph (=kilometers per hour).
      (車は時速80キロメートルで走った)
      Gasoline is sold by the gallon in the United States.
      (米国ではガソリンはガロン単位で売られる)
      Here is a wooden block with (the) dimensions of 10 by 5 by 4cm.
      (ここに寸法が横10cm縦5cm奥行4cmの木片がある)
      He looks young for his age. (彼は年の割には若く見える)
      She bought the blouse for 40 dollars.
      (彼女はそのブラウスを40ドルで買った)
    13. 様態:by、in、of、on、withなど
    14. これは「前置詞 + 抽象名詞」の形でよく用いられます。
      I met him by chanceaccident〕at the trade fair.
      (見本市で偶然彼に出会った)
      He was, in factreality〕, an industrial spy.
      (彼は実は産業スパイであった)
      This meeting must of necessity be put off for a while.
      (当会はやむなく、しばらくの間延期しなければならない)
      It is not likely that he did it on purpose.
      (彼がわざとそうしたとは思えない)
      We got through the inspection with difficultywith ease〕.
      (やっとのことで〔楽々と〕検査に合格した)