第31章 前置詞
ふつう前置詞のあとにきて、その働きをうける語(句)を前置詞の目的語といいます。
- 前置詞の目的語となりうるもの
前置詞の目的語となるのは一般に名詞・代名詞の目的格ですが、このほか動名詞・不定詞・形容詞・句・節も前置詞の目的語となることができます。- 名詞・代名詞
The majority of Japanese people regard themselves as middle-class.
(日本人の大多数はみずからを中流階級だと思っている)
The urgency of the situation is an unimportant matter to him.
(事態の急迫も彼には取るに足りない事柄である) - 動名詞
He is quick in catching opportunities. (彼は機をとらえるのが早い)
She is good at speaking English. (彼女は英語を話すのがうまい) - 不定詞 ―― about、butなどに限られ、文語体
I was just about to leave when she telephoned.
(ちょうど出ようとしていた矢先、彼女から電話がかかってきた)
I could do nothing but keep silent about the matter.
(そのことについては沈黙を守るしかなかった) - 形容詞 ―― 慣用句の形で
He cannot speak English at all. (彼は全く英語が話せない)
Things went from bad to worse. (事態は一層悪化した)
このほかafter all(やはり)、at best(せいぜい)、at first(最初は)、in all(総計で)、in general(一般に=generally)、of late(近頃=lately)など - 句 ―― 「前置詞 + 名詞」の形で
A man came from behind the door and told me to stay where I was.
(ひとりの男がドアの陰から出て来て、私にそのままでいるようにと言った)
The survey covered one thousand salaried workers of from fifty to fifty-nine years of age.
( この調査は50歳から59歳までのサラリーマン1,000名を範囲としたものである)
このほかfrom under the table(テーブルの下から)、since before the war(戦前以来)など - 節 ―― 疑問詞に導かれるもの
He is worrying about what we should do next.
(彼は次に何をすべきかについて気をもんでいる)
He will not work except when he wants to.
(彼は気が向いた時以外は働こうとしない)
Return it to where it came from.
(それをもとあったところに返しなさい)
- 名詞・代名詞
- 前置詞と目的語の位置
前述のように前置詞の目的語は前置詞のあとにくるのが原則ですが、次の場合には両者の位置が変わってきます。- 目的語が疑問詞(または疑問詞のついた語句)の場合
前置詞を疑問詞の前または動詞の次に置きます。ただし前者は一般に文語体に、後者は口語体に用いられます。
$$
\begin{cases}
\text{For whom are you waiting? 【文語体】} \\
\text{(だれを待っていらっしゃるのですか)} \\
\text{Who (Whom) are you waiting for? 【口語体】} \\
\end{cases}
$$
$$
\begin{cases}
\text{At whose house are you staying? 【文語体】} \\
\text{(だれの家にお泊まりですか)} \\
\text{Whose house are you staying at? 【口語体】} \\
\end{cases}
$$ - 目的語が関係代名詞(または関係代名詞のついた語句)の場合
(a)と同様に、前置詞を関係代名詞の前または動詞の次に置きます。ただし目的語の関係代名詞がthat、asのとき、および関係代名詞の目的格を省略するときは必ず前置詞は動詞のあとに置きます。
This is a well-known gallery { in which many kinds of articles are displayed } for sale. which many kinds of articles are displayed in (これはいろいろな品物が売り物として陳列してある有名なギャラリーです)
Is that the farm (that) you spoke of the other day?
(あれが先日あなたが話していた農場なのですか)
I don’t like men such as those you have been mixing with.
(私はあなたが付き合っているそんな人たちは好きではない)
What is the job { in which you are most interested? (which) you are most interested in?
【注】科学技術関係の英文のように改まった英文では、前置詞は関係代名詞の前に置くのが通例とされています。
Jet engines, with which most modern aircraft are equipped, are constructed of lightweight materials.
(=Jet engines, which most modern aircraft are equipped with, ・・・.)
( ジェットエンジン(、それ)は最新鋭航空機の大半が装備しており、軽量素材で造られている) - 前置詞が形容詞的用法の不定詞に付随する場合
すでに不定詞の項で学んだように、前置詞は不定詞のあとに置かれます。
I have no money to buy a house with.
(私には家を買うような金はない)
There is nothing for you to be afraid of.
(あなたは恐れることはなにもありません) - 前置詞を含む動詞句が受動態になった場合
これも受動態の項で学びましたが、前置詞は動詞(過去分詞)のあとに置かれます。
I was spoken to by a foreigner in〔on〕the street.
(← A foreigner spoke to me in〔on〕the street.)
(私は通りで外国人から話しかけられた)
He is not to be depended (up)on (by anybody).
(彼はだれからも頼りにされない) - 目的語を文頭において強調する場合 ―― 前置詞は動詞のあとに置きます。
Him I rely (up)on. (彼こそ私は当てにしているのだ)
Anything else I would willingly agree to.
(ほかのことならなんでも喜んで同意しますが)
- 目的語が疑問詞(または疑問詞のついた語句)の場合
- 前置詞の目的語と前置詞の省略
- 前置詞の目的語の省略
前置詞の目的語はしばしば省略されます。この場合前置詞はむしろ副詞の一種と考えることができましょう。副詞として用いられる場合にはふつう強勢が置かれます。
$$
\begin{cases}
\text{The relief party came up the hill. 【前置詞】} \\
\text{(救援隊が丘をのぼって来た)} \\
\text{The relief party came up (=approached), in spite of the wind and rain. 【副詞】} \\
\text{(救援隊が風雨を衝いて近づいて来た)} \\
\end{cases}
$$
$$
\begin{cases}
\text{He walked along the street to the station. 【前置詞】} \\
\text{(彼は通りを歩いて駅まで行った)} \\
\text{He walked along talking to (with) his friends.【副詞】} \\
\text{(彼は友人と話しながら歩いて行った)} \\
\end{cases}
$$
【注】前置詞と副詞の区別は目的語の有無によります。 - 前置詞の省略
- 目的語の前にthis、last、next、one、every、aboutなどがついている場合
I came to the office (at) about eight this morning.
(私はけさは8時頃に出社した)
Every end of the month I am extremely busy.
(月末はいつも大変忙しい) - 目的語がthat節の場合
be aware of(に気づく)、be afraid of(を恐れる)、be glad of(を喜ぶ)、be sure of(を確信する)、see to(に気をつける)などの目的語が、thatに導かれる名詞節の場合には、前置詞を省略するのがふつうです。
$$
\begin{cases}
\text{He was aware of my resignation. (彼は私の辞職を知っていた)} \\
\text{He was aware that I had resigned.} \\
\end{cases}
$$
$$
\begin{cases}
\text{Please see to your health. (健康に気をつけてください)} \\
\text{Please see that you stay healthy.} \\
\end{cases}
$$
- 目的語の前にthis、last、next、one、every、aboutなどがついている場合
- 前置詞の目的語の省略