第22章 受動態の形式
能動態の文を受動態の文にかえるには、動作を受けるもの(目的語)を主語にし、動詞を「be + 過去分詞」の形に変えればよいわけですが、その手順は次の通りです。
- 能動態の目的語を主語(主格)にかえ、文頭に置く。
- 能動態の動詞を「be(の変化形)+ 過去分詞」の形に変える。
- 動作主を示す前置詞byを置き、その次にもとの主語を目的格にして置く。
- 補語がある場合はそのまま残しておく。
- 目的語が2つある場合は、普通その一方を残しておく。
- 修飾語句はそのままつける。
【注】by~の省略:
能動態の主語が受動態ではいつも「by +目的語」の形で用いられるとは限りません。むしろby~は省略されることが多く、だれによってなされたか、動作主を明らかにする必要がある場合にのみby~を用いるといったほうが実際的です。
A volcano destroyed Pompeii. | 〔能動態〕 |
Pompeii was destroyed by a volcano. | 〔受動態〕 |
ここでは、ポンペイという古代の都市を破壊したのは人力や戦争ではなく、「火山」であることが重要な記述要素になっているので、by以下の動作主は省略しません。これに対して
$$
\begin{cases}
\text{They speak English and French in Canada. 〔能動態〕} \\
\text{English and French are spoken in Canada. 〔受動態〕} \\
\text{(カナダでは英語とフランス語が話される)} \\
\end{cases}
$$
ここで、英語とフランス語を話すtheyは特定の「彼等」ではなく、漠然とカナダにいる人たち一般を指しているので、受動態でby themは用いません。
要約すれば、by~が省略されるのは、
- 能動態の主語がwe、you、they、peopleなどのような一般人称で、漠然と動作の関係者を示す場合
- 行為者をはっきりと示すことが困難か、あるいは明示することをおそれたり、必要としない場合
であるといえます。
なお、by~を用いず、by以外の前置詞が受動態の文中で用いられる場合もあります。これについては「23-2 by以外の前置詞を用いた受動態」を参照してください。
- 「S + V + O」の文型
$$
\begin{cases}
\text{Somebody did someting. (だれかが何をした)} \\
\text{Something was done by somebody.} \\
\text{(何かがだれかによっておこなわれた)}
\end{cases}
$$
$$
\begin{cases}
\text{Economic considerations often influence living expenses. } \\
\text{(経済事情がしばしば生活費に影響を及ぼす)} \\
\text{Living expenses are often influenced by economic considerations.} \\
\text{(生活費はしばしば経済事情によって影響を受ける)}
\end{cases}
$$
【注】目的語が名詞節のときは、二通りの受動態が可能です。
They say that he failed in business.
(人々は彼が事業に失敗したと言っている)
They say that he failed in business.
(人々は彼が事業に失敗したと言っている)→{ 1. It is said that he failed in business. 2. He is said to have failed in business.
(彼は事業に失敗したという話だ) - 「S + V + IO + DO」の文型
この場合は、原則として間接目的語(IO)を主語とする受動態と直接目的語(DO)を主語とする受動態の2つが可能です。
The bank lent him a large sum of money. (銀行は彼に多額の金を貸した) →{ 1. He was lent a large sum of money by the bank.
(彼は銀行から多額の金の貸付をうけた)2. A large sum of money was lent (to) him by the bank.
(多額の金が銀行から彼に貸し付けられた)We promised the young man a new position in the company.
(〔我々は〕その青年に会社の新しいポジションを約束した)→{ 1. The young man was promised a new position in the company.
(その青年は会社の新しいポジションが約束された)2. A new position in the company was promised (to) the young man.
(会社の新しいポジションがその青年に約束された)
【注】上記の2つの例文中の②のように、直接目的語が主語となった受動態においては、とり残された間接目的語の前にはしばしば前置詞to、forまたはofが添えられます。
$$
\begin{cases}
\text{He offered me a bilateral contract. (彼は私に双務契約を申し出た)} \\
\text{A bilateral contract was offered (to) me by him.} \\
\text{(双務契約が彼から私に申し込まれた)}
\end{cases}
$$ $$
\begin{cases}
\text{Companies provide employees (with) various welfare facilities.} \\
\text{(会社は従業員にさまざまな福利施設を設ける)} \\
\text{Various welfare facilities are provided for employees by companies .} \\
\text{(さまざまな福利施設が会社によって従業員(のため)に設けられる)}
\end{cases}
$$$$
\begin{cases}
\text{He asked me several questions. (彼は私にいくつか質問をした)} \\
\text{Several questions were asked (of) me by him.} \\
\text{(いくつかの質問が彼から私になされた)}
\end{cases}
$$ - 「S + V + O + C」の文型
補語は受動態の主語になることはできませんので、原則的にはこの文型は「S + V + O」の文型の場合と同じ仕方になります。
$$
\begin{cases}
\text{The stockholders elected him the next president.} \\
\text{(株主たちは彼を次期社長に選んだ)} \\
\text{He was elected the next president by the stockholders.} \\
\text{(彼は株主たちによって次期社長に選ばれた)※〔並列〕} \\
\end{cases}
$$
【注】能動態では知覚動詞や使役動詞のあとではtoをつけない補語としての不定詞も、受動態ではtoを必要とします。
$$
\begin{cases}
\text{We never saw him slow down in his work.} \\
\text{(彼が仕事をさぼるのを見たことはなかった)} \\
\text{He was never seen to slow down in his work.} \\
\end{cases}
$$
$$
\begin{cases}
\text{He made me sign my name to the contract.} \\
\text{(彼は私にその契約書に署名させる)} \\
\text{I was made to sign my name to the contract by him.} \\
\end{cases}
$$