好評連載コラム 実務翻訳のススメ

21-5 動名詞と不定詞

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第21章 動名詞の用法

動名詞と不定詞はともに名詞としての働きがありますが、一般的なことを述べる場合には動名詞を用い、個々の事例や特殊なことを述べる場合には不定詞を用いる傾向があります。

They say (that) smoking and drinking are not good for the health.
(喫煙や飲酒は健康によくないと言われる)
〔一般的〕
To do that would be unwise.
(そんなことをするのは賢明ではない)
〔特 殊〕
I don’t dislike working, but I don’t want to work in this company.
(働くことは嫌ではないが、この会社では働きたくはない)
〔一般的と特殊〕


一つの文で主語と補語に動名詞または不定詞を用いる場合には、主語・補語ともに同じ形を用います。
Seeing is believing. (見ることは信じることである ―― 論より証拠)
To say so is to give up the battle before it is fought.
(そんなことを言うとは戦わずして手をひくことである)
目的語としての動名詞・不定詞については以下の点に注意が必要です。

  1. 動名詞・不定詞がともに目的語になりうる場合
    begin、cease、continue、decline、dislike、hate、intend、like、neglect、omit、prefer、propose、recollect、startなどの動詞のあと。
    The engine began workingto work〕again.
    (エンジンが再び動き始めた)
    He continued explainingto explain〕his idea.
    (彼は自分の考えを説明し続けた)
    I neglected askingto ask〕for information about it.
    (私はそれに関して照会するのを怠ってしまった)
    [注]begin、startなど起動を表す動詞のあとでは一般に不定詞の方が好まれます。とくにそのあとに精神活動を示す語がくる場合や主語が無生物の場合、また進行時制の文にその傾向があります。
    I began to understand his opinion. (私は彼の意見がわかりはじめた)
    The water started to boil. (湯が沸騰しはじめた)
    The paint was beginning to come off in places.
    (ペンキがところどころはがれはじめていた)
    逆にpreferは、prefer A to B(BよりAのほうを好む)の形で用いられるときは動名詞を用いた方が適当といえます。
    He preferred working to doing nothing.
    (彼は何もしないよりは仕事をするほうを選んだ)
  2. 動名詞と不定詞では意味が異なる場合
    $$
    \begin{cases}
    \text{I stopped watching television.} \\
    \text{(テレビを見たことをやめた)} \\
    \text{I stopped to watch (=in order to watch) the parade.} \\
    \text{(パレードを見ようとして立ちどまった)}
    \end{cases}
    $$ $$
    \begin{cases}
    \text{I remember seeing him once.} \\
    \text{(一度彼に会ったのをおぼえている―過去のことがら)} \\
    \text{Remember to see him next week.} \\
    \text{(来週彼に会うのを忘れないでください―未来のことがら)}
    \end{cases}
    $$$$
    \begin{cases}
    \text{In order to live,he tired begging,cheating and stealing.} \\
    \text{(生きるために彼に物乞いも詐欺もそして泥棒までやってみたー実際にやった)} \\
    \text{He tired to open the door.} \\
    \text{(彼はドアを開けようとした―開いたかどうかは不明)}
    \end{cases}
    $$

  3. 動名詞だけが目的語になりうる場合
    avoid、deny、enjoy、finish、give up、help、leave off、mind、postpone、put offなどの動詞(句)のあと。
    Avoid making any promises. (約束することは避けなさい)
    Have you finished writing the letter yet?
    (もう手紙は書き終わりましたか)
    You should leave off heavy drinking.
    (暴飲はやめるべきだ)
    Would you mind answering the phone for me?
    (代わりに電話に出てくださいませんか)
    I’ll postpone (=put off) expressing my opinion till I learn all the details.
    (詳細がわかるまで意見を発表するのは控えておこう)
  4. 不定詞だけが目的語になりうる場合
    advise、agree、care(好む〔疑問・否定〕)、choose、decide、desire、expect、forget、hope、learn、plan、promise、want、wishなどの動詞のあと。
    He decided to resign as chairman. (彼は議長を辞任する決意をした)
    I hope to see you again some day. (いつかまたお会いしたいものです)
    We wouldn’t〔shouldn’t〕care for him to be our rival.
    (彼には我々の競争相手になってほしくない)
    [注]toのあとに動名詞がくることがあります。これは次に名詞・動名詞を導く慣用句で、不定詞を導くtoではありません。
    I am looking forward to hearing from you.
    (おたよりをお待ちしています)
    He devoted himself to developing the natural resources of Hokkaido.
    (彼は北海道の天然資源の開発に身を捧げた)