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20-3 分詞構文の用法と意味

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第20章 分詞構文

前述したように、分詞構文は分詞を用いて「接続詞 + 主語 +動詞」の働きを表すことができるので便利な言い方ともいえますが、とくに分詞で始まる分は文語的で固い表現になりやすく、口語ではあまり用いられない傾向があります。
その点を考慮しつつ、分詞の意味上の主語と主節の主語が一致する場合と一致しない場合とに分けて、分詞構文の用法と意味の概略をまとめてみましょう。

  1. 分詞の意味上の主語が主節の主語と一致する場合
    1. 時:when、while、afterなどの意味
      Seeing (=When I saw) the pictures, I remembered my childhood during the war. (その写真を見て、私は戦時中の少年時代を思い出した)
      Having (=After he had) failed several times, he succeeded at last.
      (幾度か失敗したあと、彼はやっと成功した)
    2. 原因・理由:as、because、sinceなどの意味
      (Being)(=As I was) Tired, I went to bed early.
      (疲れていたので、私は早めに床についた)
      (Being)(=As the book is) Written in easy English, the book will be read by many people.
      (やさしい英語で書かれているので、その本は多くの人に読まれるだろう)
    3. 条件:ifの意味
      Turning (=If you turn) to the left there, you will find the factory.
      (そこを左に曲がれば工場は見つかります)
      The same thing, happening (=if it should happen) in a large city, would amount to disaster.
      (同じことが大都会で起これば大惨事となったことだろう)
    4. 譲歩:although〔though〕の意味
      Accepting (=Although I accept) what you say, I still think you are in the wrong. (君の言い分を認めるとしても、やはり君は間違っていると思う)
      Living (=Though he lives) near my house, he seldom comes to see me.
      (彼は私の家の近くに住んでいるが、めったに会いに来ない)
    5. 結果:andの意味
      The storm hit the granary, causing (=and it caused) great damage.
      (暴風雨は穀倉地帯を襲い、多大な損害を与えた)
      Foreign investors are active in the Japanese stock market, owning (=and they own) more than 20 percent of the shares of listed companies.
      ( 外国人の投資家は日本の株式市場で活動しており、上場企業の20%以上の株を所有している)
    6. 付帯状況
      主節の動詞が示す動作と同時に、あるいは平行して関連のある動作が行われる場合で、ふつう「~しながら」と訳されます。
      Smiling brightly, he extended his hand to me.
      (明るくほほえみながら、彼は私に手を差しのべた)
      A jet flew up into the air, making a great noise.
      (轟音をとどろかせながら、ジェット機が上空に舞い上がった)
      [注]分詞構文の意味を鮮明にするために、分詞の前に接続詞を置くこともあります。
      Though living (=Though I live) next door, I seldom see him.
      (となり同志でありながら、彼とは滅多に会うことはない)
      While having (=While we were having) lunch, we used to talk about sports. (我々は昼食をとりながら、よくスポーツ談義をしたものだ)
  2. 分詞の意味上の主語が主節の主語と異なる場合
    これは一般に独立分詞構文と呼ばれ、分詞の意味上の主語を分詞の前に明記する場合と明記しない場合とがあります。表す意味は(1)の場合と同じです。
    1. 分詞の意味上の主語を明記する場合 ―― 一般の独立分詞構文
      ただし文語的な表現で口語ではあまり用いられません。
      All things considered (=When all things are considered), you should not take the risk.
      (すべてを考慮に入れると、危険を冒すべきではない)
      〔時〕
      The season being (=As the season was) over, I was my own master.
      (〔忙しい〕時期が終わったのでまた自由になった)
      〔理由〕
      Other things being (=If other things are) equal, we’ll follow this plan.
      (ほかの点が同じなら、この計画に従いましょう)
      〔条件〕
      I took the chair, my staff debating (=While my staff debated) about the project.
      (私が司会をし、スタッフがその企画を討議した)
      〔付帯状況〕

      [注1]独立分詞構文でもbeingは省略されることがあります。
      The meeting (being) over, we enjoyed having a chat for a little while.
      (会議がすんでから、私たちはしばらく世間話に興じた)
      [注2]独立分詞構文と似たものに「with + 目的語 + 分詞」があります。これは主として付帯状況を表す場合ですが、withが省略されることもあります。
      He retired from the company with his work unfinished.
      (彼は仕事が完成しないまま退職した)
      With more Japanese companies establishing production facilities abroad, they also need to become more active in community affairs.
      ( 日本企業が海外に生産施設を設立するにつれ、地域活動もさらに活発にする必要がある)
    2. 分詞の意味上の主語を明記しない場合 - 特別慣用法
      これは分詞の意味上の主語が話者自身か一般人で、習慣的に用いられる場合に限られます。
      Generally speaking, many foreign-affiliated companies in Japan show a tendency to adopt Japanese management styles.
      ( 一般的に言って、日本の外資系企業の多くは日本式経営方式を採用する傾向がある)
      Judging from what you say, he seems to be innocent.
      (あなたの話から判断すると、彼は無罪だと思われる)
      Speaking of Mr. Sato, how is he getting along?
      (佐藤氏と言えば、彼の消息はどうなっているのだろう)
      Considering your abilities, you should have done it better.
      (君の能力を考えれば、もっとよくできたはずだ)
      このほかfrankly〔strictly〕speaking(率直に〔厳密に〕言えば)、seeing that(~だから)、granting〔granted〕that(~だとしても)、assuming〔provided〕that(~と仮定すれば)などがあります。