第25章 仮定法
仮定法の表現形式は複雑で、上述した基本形式のほかにいくつかの特殊な構文もあります。また仮定を表す節(条件節)を他の方法で述べたり、時には条件節そのものを省略することさえあります。
- 仮定法の特殊な構文
- If it were not for~:「~がなければ」
同義語句としてbut for~、without~もよく用いられます。
If it were not for〔But forまたはWithout〕water, no creature could live on this earth. (水がなければ、どんな生物もこの地上に生存できないであろう) - If it had not been for~:「~がなかったなら」
これもbut for、without~で代用することができます。
If it had not been for〔But forまたはwithout〕your advice, I would have been at a loss.
(もしあなたの忠告がなかったら、私は途方にくれていたことだろう) - as if〔as though〕~:「まるで~のように」
仮定法過去・過去完了の両方に用いられます。
He speaks English as if〔as though〕he were an Englishman.
(彼はまるで英国人のように英語を話す)
He looked as if〔as though〕nothing had happened.
(彼はまるで何事も起きなかったような顔をしていた)
【注】口語ではas ifのあとの動詞は、wereはwasに、また過去完了形は過去形にしてよく用いられます。
She often speaks as if she was〔were〕a man.
(彼女はよく男のような話し方をする)
The dishes looked as if they were〔had been〕made of silver.
(その皿は銀でできているかのようにみえた) - 接続詞ifの省略
条件節のifは動詞を主語の前に置くとき(倒置文)は省略されます。ただしこのやり方は文語調で、格調の高い文に適し、shouldのほかcould、were、hadなどがよく用いられます。
Should I fail again (=If I should fail again), I will be discharged.
(またしくじるようなことがあれば解雇されるだろう)
Had she spoken (=If she had spoken), her accent would have shown that she was (an) American.
(しゃべれば彼女がアメリカ人だということが、そのアクセントからわかるだろう)
Were I as rich as he (=If I were as rich as he), I would travel abroad.
(彼ぐらいの金があれば海外旅行でもするのだが)
- If it were not for~:「~がなければ」
- if節以外の方法で仮定法を表す場合
仮定法は必ずしもif節だけを伴うとは限らず、他の語句を用いて暗示的に仮定法を表すこともできます。
ただこの場合、主節の動詞が「would〔should、could、mightなど〕+ 原形動詞〔あるいはhave + 過去分詞〕」の形式で用いられることに注意が必要です。- 名詞(句)に仮定の意味を含めたとき
An Englishman (=If he were an Englishman, he) would not pronounce the word that way.
(イギリス人ならその語をそんなふうに発音しないだろう)
A little care would have prevented the accident.(=If they had taken a little care, the accident would have been prevented.)
(ちょっと注意したら、その事故は防げていたであろうに) - 副詞(句)に仮定の意味を含めたとき
I went at once, otherwise (=If I had not gone at once,) I would have missed him.
(私はすぐ出かけた。そうでなかったら彼に会いそこなっていたことだろう)
A hundred years ago no doctor could have cured this disease.
(100年前だったら、この病気をなおせる医者は一人もいなかったであろう) - 前置詞(句)、接続詞(句) などに仮定の意味を含めたとき
Without〔But for〕(=If there were noまたはIf it were not for) air, no living thing could exist.
(空気がなかったら、生物は一切生存し得ないであろう)
I am otherwise engaged, or (=If I were not otherwise engaged,) I would go myself.
(別の仕事をさせていただけないならば、私の方からお暇を願いましょう) - 分詞に仮定の意味を含めたとき - 分詞構文の形で
Born (=If he had been born) in better times, he would have become a great scientist.
( もしもっとよい時代に生まれていたら、彼は偉大な科学者になっていたであろう) - 不定詞(句)に仮定の意味を含めたとき
To hear (=If you were to hear) him talk, you would think that Chicago is full of jobless persons.
(彼の話を聞いたら、シカゴには失業者がうようよしているのかと思うだろう)
I should be happy to be (=If I could be) of service to you.
(お役に立てばしあわせですが) - 関係節に仮定の意味を含めたとき
A machine that breaks〔broke〕down every other day (=If a machine breaks〔broke〕down every other day, it) would be of little use.
(一日おきに故障するような機械だったら、まずは役に立つまい)
A company manager whose judgment was bad (=If his judgment was bad, a company manager) would very soon get his company into difficulties.
(経営者の判断が誤るとその会社は直ちに窮地に陥るものだ)
- 名詞(句)に仮定の意味を含めたとき
- 条件節そのものが省略される場合
以上述べた条件節におけるifの省略、他の語句による条件節の代行のほか、条件節そのものを省略し、帰結文だけで仮定法を表す場合があります。
この場合、上記の(2)と同じように、動詞が「would〔should、could、mightなど〕+ 原形動詞〔あるいはhave + 過去分詞〕」の形式で用いられていることに注目し、文中の前後関係からどこに条件節が省略されているかを読みとることが大切です。
It was so quiet that you could have heard a pin drop.
( あたりはとても静かだったので、ピンの落ちるのも聞こえるほどであった ―― 文尾にif you had been there〔そこにいたら〕を補って考えれば状況が一層はっきりします)
How foolish you are! I would not do such a thing.
( 君はなんてばかなんだ。ぼくだったらそんなことはしないのに ―― thingのあとにif I were you〔もしぼくが君だったら〕を補うことができます)
なお帰結文だけで仮定を表すのは慣用表現に多くみられます。たとえば、
He is, as it were (=so to speak), a grown-up baby.
(彼は、いわば成人した赤ん坊だ)
You had better put an ad in the newspaper (=It would be better for you to put an ad in the newspaper).
(新聞に広告を出したほうがいいのでは)
Would you mind sitting over here instead?
(〔そこよりも〕こちらにおすわりいただけませんでしょうか)