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18-2 toつき不定詞の用法(Ⅱ)

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第18章 不定詞の用法

不定詞にはこれまで述べてきた名詞的・形容詞的・副詞的の三基本的用法のほかに、文型の一環として、また慣用的な成句としてとらえたほうが理解しやすいものがあります。さらに完了不定詞・代不定詞・分離不定詞など時制や形の上から注意を要するものもあります。

18-2-1 不定詞の補語的用法 ―― 文型の一環として

  1. 主格補語:「主語 + 自動詞 + 不定詞(補語)」の形で
    次の2つの例文をごらんください。
    1. Her work is to operate a word processor.
      (彼女の仕事はワープロを操作することである)
    2. His early retirement from active service is to be regretted (=regrettable).
      (彼の早い現役引退は惜しいことだ - 惜しまれるべきだ)
      この2つの文はいずれもbe動詞を用い、不定詞の部分の訳文も「~すること」となっている点で一見似ています。しかし
      1 は不定詞の「・・・を操作すること」と主語の「彼女の仕事」が内容的に合致しています。
      2 は「惜しいこと」が「彼の引退」の内容をさしているのではなく、「引退」についての話者の感じた様子を述べています。したがって、to be regrettedはregrettable(残念な)という形容詞で言いかえることもできます。
      つまり、1 はすでに学んだ不定詞の「名詞的」用法であり、2 は「形容詞」的用法と言うことができるでしょう。
      ただし、現実には名詞的か形容詞的か必ずしもはっきりしない場合もあります。そうした場合には、あまり分類にこだわらず、自動詞に注目しながら一つの文型として理解していく方が賢明でしょう。
      なお、この文型でよく用いられる不完全自動詞としては、beのほかseem、appear、prove、come(なる)、get、turn (out) やbe saidなどがあります。
      Japanese workers are often said to be workaholics.
      (日本の勤労者はよくワーカホリック(働き中毒者)だと言われている)
  2. 目的格補語:「主語 + 他動詞 + 目的語 + 不定詞(補語)」の形で
    不定詞が目的語の補語の働きをすることもあります。これはいわゆる第5文型「S+V+O+C」に属する構文で、目的語を補って「~に・・・するように」「~を・・・であると」などの意味を表します。そして目的語と不定詞の関係は、意味上、主語対動詞の関係になります。
    なお、この場合も動詞が不完全他動詞であることに注目し、不定詞の分類よりも、それが構文上、目的語の動作や状態を補う働きをしていることを理解することが大切です。
    We want you to continue working with us. 〔you continue・・・〕
    (私たちはあなたに引続き一緒に働いてもらいたいと思っている)
    They expect corporations to contribute more positively to the quality of their lives. 〔corporations contribute・・・〕
    ( 人々は自分たちの生活の質的な面に対し、企業がもっと積極的に貢献してほしいと期待している)
    なお、think、consider、believe、imagine、find、proveなどのあとに続くto beはしばしば省略されます。
    We firmly believe him (to be) innocent. 〔he is・・・〕
    (我々は彼が無罪だと堅く信じている)
    I can prove him (to be) a capable businessman. 〔he is・・・〕
    (私は彼が有能なビジネスマンであることを立証できる)
    [注]外見上構文が似ていても用法が異なる場合もあります。
     
    I wanted him to go.
    (私は彼に行ってほしかった)
    〔補語 -第5文型〕
    I promised him to go.
    (私は彼に〔私が〕行くと約束した)
    〔直接目的語 -第4文型〕

18-2-2 形容詞的用法

不定詞の独立的用法
不定詞はまた、文中の他の語句と文法的に何ら関係がなく、挿入句として文全体を修飾し、条件や譲歩を表すことがあります。こうした用法の不定詞を一般に独立不定詞と呼びます。
To tellspeakthe truth, I don’t like him.
(実を言うと、私は彼が気にくわない)
To be frank (with you), I don’t agree with you.
(率直に言って、きみとは意見が一致しない)
He is not very clever, to be sure, but he is honest.
(いかにも彼はそれほど利口ではない、だが彼は正直だ)
その他の独立不定詞:
to be brief(要するに)、to begin with(まず第一に)、to change〔return to〕the subject(話はちがうが〔話をもとにもどして〕)、to make a long story short(かいつまんで言えば)、needless to say(言うまでもなく)、so to speak(言わば)、strange to say(不思議なことに)など。

18-2-3 疑問詞 + 不定詞
不定詞が疑問詞の後に続いて一つの成句になり、「(いつ、どこで、何を、どのように)~したらよいか」の意味を表し、名詞句に似た働きをします。
I don’t know which to choose.
(どちらを選んだらよいか、私にはわからない)
When and where to begin is the question.
(いつどこで始めるかが問題である)
Please show me how to assemble the parts into a complete unit.
(部品から完成品を組み立てる方法を教えてください)
なお、この形はshouldを用いて名詞節に書き直すこともできます。
which to choose → which I should choose
when and where to begin → when and where we should begin
how to assemble・・・ → how I should assemble・・・

18-2-4 完了不定詞 ―― 「to have + 過去分詞」
不定詞が述語動詞の時制より以前の事柄や実現されなかった過去の願望や意図を表すときには、完了形すなわち「to have + 過去分詞」の形をとります。

  1. 述語動詞の「時」より以前に起きた動作・状態
    seem、appear、be said、be thoughtなどの述語動詞が現在時制の場合は、完了不定詞は現在完了または過去を表し、述語動詞が過去時制ならば、完了不定詞は過去完了を表します。
    He seems to have been idle. = It seems that he washas been〕idle.
    (彼はなまけていたらしい)
    He was said to have been idle. = It was said that he had been idle.
    (彼はなまけていたと言われていた)
  2. 実現されなかった過去の願望・意図
    want、wish、hope、intend、mean、expectなどの述語動詞が過去形の場合、その後に完了不定詞が続くと、過去の願望や意図が実現されなかったことを表します。
    I intended to have gone out. = I intended to go out (but I did not).
    (出かけるつもりだった - だが行かなかった)
    He hoped to have succeeded. = He hoped to succeed (but he did not).
    (彼は成功を望んだ - だが成功しなかった)

    18-2-5 代不定詞
    同じ動詞の反復をさけるため、意味が容易にわかる場合はtoだけを用いることがあります。このtoを代不定詞と言います。なおこの代不定詞は口語で用いることが多く、先行する動詞より弱く発音されます。否定の場合はnot toを用います。
    I will write him a letter of apology if you want me to.
    (私に詫び状を書けといわれるなら書きましょう)
    He went overseas all alone apart from his family, though I told him not to.
    (彼は家族から離れ単身海外に出かけた、私は行くなと言ったのに)

    18-2-6 分離不定詞
    不定詞を修飾する副詞(句)がtoと原形動詞の間に挿入されることがあります。これを分離不定詞と言います。分離不定詞に用いられる副詞(句)は様態・程度・時などを表すものが多いのですが、この形を用いないと意味があいまいになるか、ぎこちない文になる場合に限って用いるのが好ましいとされています。たとえば、
    He failed to completely understand it.
    は「彼はそれを完全に理解することはできなかった」の意味になりますが、これを
    He failed completely to understand it.
    にすると、completely(完全に)がfailedにかかるのかunderstandにかかるのかはっきりしません。
    このほか分離不定詞の例をいくつかあげておきましょう。
    to readily accept the invitation
    (二つ返事でその招待に応じる)
    to voluntarily restrain car exports to the United States
    (アメリカ向けの自動車の輸出を自主的に規制する)
    to thoroughly examine the situation
    (事態を徹底的に調査する)
    to immediately make contact with the person in charge
    (担当者と即刻連絡をとる)

    I wanted him to go.
    (私は彼に行ってほしかった)
    〔補語 -第5文型〕
    I promised him to go.
    (私は彼に〔私が〕行くと約束した)
    〔直接目的語 -第4文型〕