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11-2 形容詞の用法

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第11章 形容詞

形容詞には、直接名詞を修飾してその意味を限定する働き(限定的用法)と動詞のあとに置かれて補語の働きをするもの(叙述的用法)との二つの用法があるほか、他の語と結びついて名詞の働きをする場合もあります。

  1. 限定的用法
    限定的用法では名詞前後に置かれますが、前に置かれるのが普通です。
    1. 名詞の前に置かれる場合
      young men(若い人達)、 cold water(冷水)、 hard rubber(硬質ゴム)、 public welfare(公共の福祉)など
    2. 名詞の後に置かれる場合
      これには、1. somethingなどのように-thing形で終わる語を修飾する場合、2 形容詞に他の語がついて一つのまとまった語句の働きをする場合、3. その他習慣による場合などがあります。
      something good to eat (なにかおいしいたべもの)
      housewife thirty-six years old (36歳の主婦)
      taste peculiar to Japanese food (日本料理特有の味覚)
      all the assistance possible (できるだけの援助)
      【注】前置詞句や分詞句あるいは関係代名詞などに導かれた節が形容詞的用法の場合は、やはりその修飾する名詞のあとにつけます。
      the 9:00 a.m. express to Osaka (午前9時の大阪行き急行)
      letter  written in English (英語で書かれた手紙)
      the kind policeman who showed me the way
      (道を案内してくれた親切な警官)
    3. 2つ以上の限定形容詞が1つの名詞を修飾する場合の
      この場合はふつう次のような順序によります。
      冠 詞
      指示語
      所有格
      数量 大小・性質・色など 材 料
      固有名詞
      + 名詞
      1. a
      2. these
      3. my
      five solid
      clever
      new
      wooden
      American
      gold
        table
      boys
      watch

      (1.がっしりした木製テーブル、2. この5人の賢いアメリカの少年、3. 私の新しい金時計)
      【注1】同種類の形容詞が2つ以上あるときは語調を主にして考え、一般に短いものを先に置き、長いものは後に置きます。またそれらの語の間にand、or、butなどの接続詞またはコンマをはさむのがふつうです。
      kindclever and diligent boy (親切でりこうで勤勉な少年)a poor but happy woman (貧しいが幸せな女)
      【注2】上の原則のほか、話者の強調したいものに応じて語順が変わることもあります。
      Japanese wooden box(木製でも特に日本製の箱)
      wooden Japanese box(日本製でも特に木製の箱)
      【注3】必要以上に形容詞を羅列することはむしろわずらわしく、訴える力も弱くなります。
      This is a smart, inexpensive, lightweight, circular, blue, luminous, Swiss, musical, plastic alarm clock. (これは、スマートで、安くて軽く、円形の、青く光る、スイスのオルゴール付プラスチック製目ざまし時計である)
      は次のように、
      This blue luminous Swiss musical alarm clock is smart and inexpensive. It is lightweight, circular in shape and made of plastic.
      (この青く光る、スイスのオルゴール付目ざまし時計はスマートで値段も安い。軽くて円く、プラスチック製である)
      と変えると、より簡潔で訴える力も強くなるでしょう。
  2. 叙述的用法
    叙述的用法とは、形容詞が直接名詞を修飾するのではなく、動詞のあとに置かれて補語となっている場合です。
    This watch is waterproof (=proof against water).
    (この時計は防水になっている)
    〔主格補語〕
    I’m sorry to have kept you waiting so long.
    (長いことお待たせして申しわけありません)
    〔目的格補語〕
  3. 限定・叙述の2用法で注意を要する形容詞
    形容詞には、限定か叙述の一方の用法しかないものや、同じ形容詞でも限定・叙述で意味が異なるものもあります。
    1. 限定的用法しかないもの ――「材料」や「関係」を表す形容詞に多く見られます。
      wooden desk(木製の机)、 earthen ware(土器)、 a rightleft〕hand(右〔左〕手)、 my elder brother(私の兄)、 the upper room(階上のへや)、 the outer world(外界)など
    2. 叙述的用法しかないもの
      well(元気で)、(満足して)や接頭辞a-のついた形容詞 ―― afraid(恐れて)、 alike(似て)、 alive(生きて)、 alone(ひとりで)、 asleep(眠って)、 awake(目ざめて)、 aware(知って)など。
      How are you? ―― I am very well, thank you.
      am content to do so. (私は甘んじてそうします)
      am afraid of death〔to die、of dying〕. (私は死ぬのがこわい)
    3. 限定的用法と叙述的用法とで意味を異にするもの
        (限定的) (叙述的)
      certain ある、いくらかの たしかで
      late おそい、死んだ〔故・・・〕 おくれて
      present 現在の 出席して
      We made a certain profit. (我々はいくらかの利益をあげた)
      It is not certain when he may return.
      (彼がいつ帰るかはっきりわかりません)
  4. 名詞的用法
    名詞が形容詞として用いられることは前にも述べましたが、逆に形容詞が名詞として用いられることがあります。
    1. the+形容詞(「6-2 定冠詞の特別用法」参照)
      • 複数普通名詞となる場合
        those who are・・・、・・・people(・・・の人々)の意味を表します。
        The rich (=Rich people) are apt to despise the poor (=poor people).
        (とかく金持ちは貧乏人を軽べつしたがるものである)
        The old (=Old people) often cannot understand the feelings of the young (=young people).
        (老人には若い人の感情を理解できないことがよくある)
        【注】形容詞的に用いられた現在分詞・過去分詞も同じように「~している人々、~された人々」の意味を表します。
        the dying and the wounded (死傷者)
      • 単数普通名詞となる場合
        the person who is ・・・ (・・・の人)の意味を表しますが、the accused(被告人)、the deceased 〔dead〕 (故人)など特定のものに限られ、単数扱いになります。The judge told the accused(=the accused person)to stand up.
        (裁判官は被告に起立するように言った)
        The deceased 〔dead〕 was a strong but kind man.
        (故人は強い人であったが優しい人でもあった)
      • 抽象名詞となる場合
        what is ・・・ (・・・のもの)の意味で、文語的な表現ですが、これも単数扱いになります。
        the beautiful (=beauty美)
        the impossible (=impossibility不可能〔なこと〕)
        We must distinguish between the false (=falsity) and the true (=truth).
        (虚偽と真実とは識別しなければならない)
      • 物体などの一部を表す名詞となる場合
        the ・・・ part (・・・の部分)の意味で、そのあとにofを伴います。
        the white of an egg(卵の白味)、 the middle of a river(川の中央部)、 the thick of the forest(森林の茂み)
    2. 前置詞(+the)+形容詞 ―― ふつう慣用句として用いられます。
      at last(最後に)、 at (the) first(はじめに)、 before long(近いうちに)、 on the right〔left〕(右〔左〕側に)、 in the right〔wrong〕(正しく〔誤って〕)、 at the best(せいぜい)、 at (the) least(少なくとも)、 in general(概して)、 in particular(とくに)、 in short(要するに)、 on the whole(大体において)など
    3. その他
      1. 国語を表す場合
        English(英語)、 Japanese(日本語)、 Spanish(スペイン語)など
      2. 数量を表す語を伴う場合
        10,000 wounded(負傷者1万人)、 a crowd of unemployed(多数の失業者)
      3. 純然たる名詞に変わったもの
        a noble/nobles(貴族)、 a native/natives(土着民)、an elder/elders(年長者)、 a criminal/criminals(罪人)、 greens(野菜)、 necessaries(生活必需品)