好評連載コラム 実務翻訳のススメ

(重複)36-1 英文和訳の基本姿勢

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第36章 英文和訳の要点

Translators are traitors.(翻訳者は反逆者である)ということばがあります。ショッキングな言葉のようですが、たしかに言語体系を異にする他国語を自国語に移植する作業は容易なものではありません。まして風俗・習慣を異にし、思考形式もほとんど正反対といえる日英両語間において、その完全な翻訳は無謀に近く、反逆行為といってもよいかもしれません。
しかしより新しく、正確な情報を海外から吸収・消化し、伝達する能力が益々募っている昨今、いたずらに嘆いているわけにもいきません。
英文和訳といっても、英文そのものの内容・程度と訳者の能力、作品の期待価値によって、そのめざすところも一様ではありません。
第一段階としては、冒頭に述べた英文和訳の根本を念頭に置きながら、原文の意味・内容が誤りなく伝えられればそれでよいと腹をくくり、できるだけ平易で簡潔な表現を工夫してみましょう。
なお実務英文の翻訳にあたっては、いわゆるSix C’sが求められます。
Conciseness(簡潔性)、Clarity(明瞭性)、Concreteness(具体性)、Correctness(正確性)、Consistency(一貫性)、Completeness(完全性)の6つです。
たとえば原文の形式にこだわらず、Say the truth. は「真実を言え」よりも「うそをつくな」に、I would die before telling her about it. は「私は彼女にそのことを言う前に死ぬだろう」を「私は死んでも彼女にそのことは言いたくない」のように、肯定形式を否定形式に訳すこともできます。
また逆に、The machine does not start operation until both the switches are pressed. では否定形式を肯定形式にかえて、「この機械はスイッチを両方押してはじめて動き出す」と訳したほうが、日本語としては自然な言い方になるかもしれません。