指示代名詞とは、this、that、such、same、soなどのように、事物を指し示す代名詞です。人にも人以外のものにも用いられ、主格と目的格は同じ形です。this book(この本)のように、次に名詞を伴うときは実際は形容詞の働きとなり、指示形容詞とも呼ばれます。
thisとその複数形のtheseは時間的・空間的・観念的に比較的近いものを指すときに用い、thatとその複数形のthoseは遠いものを指すときに用います。ここではその用法上とくに注意すべき点について述べてみましょう。
- 時間を表す場合
上記の基本用法から言って、現在を中心としたものはthisを用い、過去から現在、現在から未来にかかるものはthese、過去を中心としたものはthatやthoseで表します。
I have a lot of things to do this week.
(今週はすることがたくさんあります)〔現在〕 I have lived here these past three years.
(私は3年前からずっとここに住んでいる)〔過去から現在へ〕 I will come and see you one of these days.
(そのうちお伺いいたします)〔現在から未来へ〕 The harvest was late that year.
(その年の収穫はおくれた)〔過去〕 Things were easier in those days.
(あの頃はすべてがもっと気楽だった)〔過去〕 - 「こんなに」「そんなに」の意味で、程度を表す場合
この場合、thisやthatのあとには数量や程度を表す形容詞や副詞がよく用いられます。したがって、副詞的用法とも言えます。
I have never woken up this early (=as early as this).
(私はこんなに早く目をさましたことはない)
Is the car that expensive (=as expensive as that)?
(その車はそんなに高価なものなのですか) - 「that〔those〕of~」の形で、既出の名詞の反復を避ける場合
この形は、二つの事柄を対比して述べる文などによく見られます。この用法はthis〔these〕にはありません。
The climate of Japan is milder than that (=the climate) of England.
(日本の気候はイギリス(の気候)よりも温和である)
His feelings were those (=the feelings) of a little boy.
(彼の感情は子供みたいなものであった)
【注意】これはthatが”the+名詞” を表す場合のことで、”a〔an〕+名詞” を表す場合にはoneを用います。
This dress is too expensive for me. Show me a cheaper one (=dress).
(このドレスは私には高すぎる。もっと安いのを見せてください) - thisとthatを対照的に用いて、「あれや、これや」の意味を表す場合
He went to this doctor and that (doctor).
(彼はこの医者、あの医者と方々の医者の所へ行った)
He is always calling on this friend or that (friend).
(彼はいつも誰かしら友人の所を訪ねている)
Some say this, and some say that.
(こう言う者もあり、ああ言う者もいる)